「全国包括許可承認済」の落とし穴

久しぶりの投稿です。

今日は『全国包括許可承認』という言葉について考えていきたいと思います。

1 全国包括許可承認を取得している=万能ではない

もし、ドローンの空撮を依頼する時にその業者が、
『私たちは全国包括許可承認を取得済です!』
と言っていたらどのように感じますか?

率直に「安心できる」という感想を持つ方は多いと思います。
また、「全国包括」という言葉を聞くと、「全国いつでもどこでも撮影ができます!」
と言っているように感じてしまいます。

しかし、現実は『全国包括許可承認』を取得していても、ドローンが飛行できない例はたくさんあります。
「私たちは許可承認を取得しているから大丈夫!」というプロの方でさえ、このことをきちんと理解できていない人もいらして、今後、業界が発展していくプロセスの障害となるのでは、と心配しています。
私はドローンを運行するプロとして、このことを正しく理解した上で、一般の方々に広くお知らせしていく必要があると感じています。

2 全国包括許可承認とは?

例えば、
山奥の、周囲に誰もいない、人が作った物もない、昼間に、高度10m、垂直に、飲酒をせずに、機体を見て
無人航空機(200g以上のドローン)を飛行させるとき、航空法上では許可承認は必要ありません。(とは言っても、航空法以外の条件もありますのでご注意を)

ただし、条件が変わって来ると許可や承認が必要になってきます。
例えば、

❶山奥→都心
❷周囲に誰もいない→すぐ近く(例えば5mほど)に見知らぬ人が歩いている
❸人が作った物がない→すぐ近く(例えば20mほど)に電柱が立っている
❹昼間に→夜間

の条件が一つでも変わっただけで飛行の許可承認が必要になってきます。

具体的には、
飛行が禁止されている下記の3つの飛行場所で飛行させたい
禁止されている飛行の場所

下記で許可されている飛行の方法以外、または禁止されている飛行の方法で飛行させたい
禁止あれている飛行の方法
という場合には、許可や承認が必要です。

ところが、この許可や承認をそのたびに申請することは負担となります。
また、飛行の10開庁日(祝日や休日を除く平日で10日)前までに申請する必要があるので、突然飛行させたくても許可が間に合わないことがあります。

そんなことを一気に解決してくれるのが、「全国包括許可承認」です。
一度この許可承認を取得すると、上記のような飛行をその都度申請しなくても、どこででも飛行させることができる「魔法の杖」のようなものなのです。

その上この包括許可承認は、最大一年間の期間で取得できます。

3 全国包括許可承認申請の方法

では、全国包括許可承認を申請するには、どのようにしたら良いのでしょうか?
最近では、DIPSにアクセスしてオンラインで申請する人が増えてきましたが、

DIPSトップ画面
DIPS画面

オンライン上で必要な項目を入力したり、選択したりする中で申請ができる大変便利なものです。
ただ、そのシステムの中に、「全国包括」という文言は一言も出てきません。

以下のように飛行させる場所を問われた時に、「特定の場所・経路で飛行しない」を選択することによって、全国どこででも飛行ができるようになります。

飛行する場所選択フォーム

「特定の場所・経路で飛行しない」を選択する=「全国包括申請」ということになります。

4 包括申請で許可承認が下りないもの

しかし、この「魔法の杖」は万能ではありません。「包括許可承認」がされない条件があります。

❶空港周辺の飛行
❷高度150m以上の飛行
❸イベント(例えば花火大会など)上空の飛行
などは包括申請しても許可承認が下りないので、
「〜の場所で飛行したいので許可して下さい」という個別の申請(特定の場所・経路で飛行する申請)をする必要が出てきます。

5 申請にはマニュアルが必要

許可承認を申請するためには「マニュアル」を添付することになっています。
ここで言うマニュアルって何でしょうか?
分かりやすく言うと、ドローンを飛行させる上で守る安全基準です。
例えば、「私は定期的に点検をします!」「高速道路や鉄道の近くは飛行させません!」
などの宣言をして初めて
「そんな安全基準を守って飛行させるのなら、許可承認をしてやろうじゃないか」
という話になるのです。

このマニュアルは最初から自作しても良いのですが、内容が不十分だと許可や承認が下りないので、多くの人は航空局が作成した標準的なマニュアルをそのまま使っているようです。

標準マニュアル②

 

しかし、マニュアルの内容を確認もせずにそのまま申請に使用している人がまだまだ見られます。
マニュアルに従った飛行が求められるのですが、マニュアルの内容を見ていない人は当然守ることもできませんね。

国土交通省のHPに掲載されていますので、確認してみて下さい。
➡️国土交通省航空局標準マニュアル②(場所を特定しない申請について適用)

6 標準マニュアルに書かれていること

航空局が出している標準的なマニュアル(場所を特定しないもの=包括申請用)には多くのことが定められています。
その中でも、知らないうちに違反しがちなのは…

❶風速5m/s以上の風速で飛行させない。
❷第三者の往来の多い学校、病院等の不特定多数の人が集まる場所の上空やその付近は飛行させない。
❸人又は物件との距離が30m以上確保できる離発着場所及び周辺の第三者の立ち入りを制限できる範囲で飛行経路を選定する。
❹高速道路、交通量が多い一般道、鉄道の上空やその付近では飛行させない。
❺夜間の離発着場所において車のヘッドライトや撮影用照明機材等で機体離発着場所に十分な照明を確保する。


などです。
業者の方でも知らずに標準マニュアルで包括申請して、学校で撮影しているという話を聞きます。その場合、❷に該当するので飛行できません。
まずは申請しているマニュアルをしっかりと見直すことが大切だと考えています。

7 標準マニュアルからオリジナルマニュアルへ

HanaDroneでは、標準マニュアルではなく、オリジナルマニュアルへ変更して申請しています。
適切な安全体制の中で飛行させることを条件に、標準マニュアルで制限されている飛行を一部可能(例えば風速5m/s以上の飛行、学校や病院の飛行を可)としています。
長い期間をかけて、少しずつマニュアルをより良いものにしてきました。

全国包括許可承認を得たからといって万能ではないことを理解していただき、許可承認を逸脱した飛行はしない、頼まない、を徹底して、ドローンが社会に認められるようにしていきたいと考えております。