ドローン(無人航空機)の機体登録が義務化

ドローン機体登録制度

1 令和2年6月17日法改正の概要

令和2年通常国会の最終日に国会議事堂
・航空法
・小型無人機等飛行禁止法
の改正が議決されました。改正の背景にあるのは、ドローンの法令違反や事故が増えているということです。

令和元年10月〜11月には関西国際空港でドローンの飛行がたびたび目撃され、航空機の欠航や遅延が相次ぐなど大きな影響が出ました。

法改正の趣旨は2本立てとなっています。

① 機体を登録することで所有者をはっきりさせ、原因追及や安全確保につなげる

航空法(200g以上のドローンが対象)を改正して、機体登録制度を新設

② 空港周辺のドローンの飛行により、航空機の運航に支障が出ないようにする

小型無人機等飛行禁止法(200g未満のドローン等が対象)を改正して、空港周辺での飛行を制限

今回は、この新設された機体登録制度に注目して、記事にして参りたいと思います。

2 自動車で言うナンバープレートを機体に表示


FAAロゴアメリカの連邦航空法では、一定以上の重量のドローンを飛行させるためには、機体登録した上でIDを機体に表示する仕組みを数年前から採用してきました。

しかし、これまでの日本にはそのような仕組みがなく、ドローンで違反や事故があっても、ドローンの持ち主が分からないことがありました。

ナンバープレートそんな状況の日本にアメリカと同様の仕組みがついに採用される訳です。機体登録の上で、その登録記号を機体に表示する義務が発生します。
ちょうど自動車でナンバープレートをつけていると同じ感覚です。
機体登録制度の新設は、事故や違反の「逃げ得」とならず、原因追究ができるということだけでなく、事故や違反の抑止力にもつながると私は感じています。

3 登録の対象ドローン

今回の法改正による機体登録制度は、航空法に新規追加されました。
航空法は200g以上のドローン=無人航空機に適用されますので、200g以上のドローンに機体登録の義務が発生します。
いわゆるトイドローン (模型航空機)と呼ばれる200g未満のドローンの機体登録については対象外です。
前述の関西国際空港の事案では模型航空機の飛行の可能性があるようですが、今回は模型航空機は機体登録の対象から外れました

4 制度の開始時期

辞書イメージこの航空法の改正の施行は公布の日(令和2年6月24日)から2年を超えない範囲で施行となります。1年後なのか1年半後なのかはっきりしたことは分かりませんが、国土交通省から運用に関わる詳しい内容が提示されて、運用に入ります。

5 制度の内容

①無人航空機登録原簿に登録を受けたもの以外は飛行させることはできません
→国土交通大臣が無人航空機の登録を行うとあるので、こちらに申請となるようです。登録となって初めて飛行ができます。安全が著しく損なわれる可能性がある機体は登録できません。
② 無人航空機が登録となると登録記号等が通知されますので、所有者は登録記号をすみやかに機体に表示しなくてはなりません
④ 登録は更新(3〜5年おき)しなければ効力を失います
⑤ 所有者は、所有者の変更があった時には、届け出る義務があります。
⑥ 所有者は、機体が消失や解体した時、無人航空機でなくなった時は登録抹消を15日以内に届け出る義務があります2ヶ月間不明になった時も届け出の義務があります。 
⑦ 使用者は、整備・改造することにより、機体の状態を維持する義務があります。
⑧ 国土交通大臣は、安全に飛行できなくなった場合に、是正措置を命じたり、登録を抹消したりできます。
⑨ 機体の登録や更新には手数料がかかります。

登録の申請後、「飛行させる・させない」に関わらず登録の記号を機体に表示することが求められ、さらに無人航空機としてこの世に存在できなくなった時も届け出が必要となるので、登録していない無人航空機は原則存在しないことになります

また、登録してようやく「飛ばせる」のですが、これで終わらないのがこの制度のポイントです。
常に機体が同様の性能が維持できるように整備することが求められますし、販売や譲渡などで機体の所有者が変われば、届け出が求められます。

そして特筆すべきは、行方不明になった無人航空機の届け出義務が定められたことです。機体の管理が徹底的に求められます。

6 登録される内容

① 無人航空機の種類
② 無人航空機の形式
③ 無人航空機の製造者
④ 無人航空機の製造番号
⑤ 所有者の氏名又は名称及び住所
⑥ 登録の年月日
⑦ 使用者の氏名又は名称及び住所
⑧ その他

これまでも許可や承認を得て飛行させる時には機体の登録が必要となっており、最近では所有者の情報も求められていましたので、登録内容はこれまでの制度の延長線上にあると考えて良いと思います。

7 機体登録制度から国家資格制度へ

機体登録制度の先には、ドローンの操縦についての国家資格化があると言われていますが、どうなるのでしょうか?
ドローンの操縦については、現在民間資格があるだけで、自動車運転免許のような国家資格が無いのが現状です。言い換えると、何の資格を持たない人がドローンを操縦することができる仕組みとなっています。
安全なドローン社会を追求した時に、「国家資格を作るべきだ!」となりますが、ドローン社会の裾野を広げ、さらなる発展を目指した時には国家資格が足かせになってしまう面も出てきます。

安全とドローン業界の発展との絶妙なバランスの模索はまだまだ続きそうです。