人又は物件から30m未満の飛行とは?

人又は物件から30m未満の飛行とは?

ドローンを飛行させていると、「人または物件から30m離さなくてはいけない」という言葉と必ず出会います。
では、人って誰を指すのか?物件とは何を指すのか?
意外と分かっているようで分かっていないこの問題に対して、もう一度、深く掘り下げて考えていきたいと思います。

1 法的な裏付け

では、航空法その他法令でどのように記載されているか確認してみましょう。

航空法第百三十二条の二
無人航空機を飛行させる者は、次に掲げる方法によりこれを飛行させなければならない。ただし、国土交通省令で定めるところにより、あらかじめ、次の各号に掲げる方法のいずれかによらずに飛行させることが航空機の航行の安全並びに地上及び水上の人及び物件の安全を損なうおそれがないことについて国土交通大臣の承認を受けたときは、その承認を受けたところに従い、これを飛行させることができる。
三 当該無人航空機と地上又は水上の人又は物件との間に国土交通省令で定める距離を保って飛行させること。
航空法施行規則(飛行の方法)第二百三十六条の二
法第百三十二条の二第三号の国土交通省令で定める距離は、三十メートルとする。
この2つの条文を見ると、どんな人や物件(形あるもの、家、車、電柱…)から30m以内であれば飛行させることはできない、ということになります。
極端なことを言うと、操縦者本人も飛行するドローンから30m以内に入れないことになります。ハンドキャッチすることもでできなくなりますね。
いったいどうすれば…という考えに行きついてしまいます。

2 無人航空機(ドローン、ラジコン等)の飛行に関するQ&A

このことを考えすすめていくためには、国土交通省航空局のHPに掲載されている「無人航空機(ドローン、ラジコン等)の飛行に関するQ&A」を読み解いていく必要があります。

「人」についての記述

「人」とは無人航空機を飛行させる者の関係者(例えば、イベントのエキストラ、競技大会の大会関係者等、無人航空機の飛行に直接的又は間接的に関与している者)以外の者を指します。

国土交通省では、
飛行させる者の関係者以外の人=第三者
という言葉を使っていますが、この第三者が30m以内にいる状況で飛行しないようにと定めているのです。
自分や飛行に関与している人は第三者にはあたらない訳です。飛行と関係のない通行人は第三者にあたります。

ただ、ここで問題になるのは、街を歩く人に「ドローンが飛行するので協力してもらえませんか?」と言ったら、その場合の扱いがどうなるか、ということです。
この「協力してもらえませんか?」という言葉がくせ者ものです。
残念ながら、

歩行者としてドローンの撮影の妨げにならないように協力…第三者
歩行者としてドローンの撮影の被写体として協力…関係者
と解釈するのが適当のようです。

「物件」についての記述

次に掲げるものが「物件」に該当します。
a)中に人が存在することが想定される機器 b)建築物その他の相当の大きさを有する工作物等
具体的な「物件」の例は以下のとおりです。
車両等:自動車、鉄道車両、軌道車両、船舶、航空機、建設機械、港湾のクレーン等
工作物:ビル、住居、工場、倉庫、橋梁、高架、水門、変電所、鉄塔、電柱、電線、信号機、街灯 等
※なお、以下の物件は、保護すべき物件には該当しません。
a)土地(田畑用地及び舗装された土地(道路の路面等)、堤防、鉄道の線路等であって土地と一体となっているものを含む。)
b)自然物(樹木、雑草 等) 等

こちらも全てのものが該当するのではなく、自然物等は該当しません。ただし、意外と盲点なのが電柱や電線。日本中どこにでも立っています。

3 人または物件から30m未満で飛行させるには

では、30m未満で飛行させたい時にはどうすれば良いのか?その救済措置があります。それは国土交通省に「人または物件から30m以内で飛行させる可能性あるので、飛行させて下さい」と承認の申請をすれば良いのです。例えば、〇月△日~〇月△日の飛行(個別の案件)に対して申請をすることもできますし、飛行させる時に「あっ、30m未満の飛行になりそうだ」と突然困るような事態を避けるために最長1年の包括申請をすることもできます。ちなみに、10開庁日(土日・祝日・年末年始の閉庁日を除く)前までに申請を出しておくことになっています。